ビジネス

#76. 消費社会を生きる私たちが考えるべきこと -ムヒカ大統領スピーチ全文-

テレビやインターネット上では膨大な量のCMが放送され、企業は私たちに『得だぞ!買え!買え!』と私たちに訴えかけてくる。

『その製品はとても優れていますよ!だからあなたは買った方が良い。今ならキャンペーンやってるから。ほら、ほら』と圧力をかけてくる。

このように消費社会に生きる私たちの目の前では、日々『買え買え戦争』が繰り広げられている。『これによって得をするのはあなたです。逆にこれをしないと損をするのもあなたです。』この基本戦略で洗脳しようとしてくる。

企業は私たちに多くのものを消費させ、それで利益を得よう企てる。彼らは、私たちの消費ペースが落ちると商品が売れなくなるので非常に困る。消費ペースを維持させるために定期的に洗脳することが不可欠だ。

私たちは物を多く売るために、自分の人生を捧げ、物を多く買うために、自分の人生を捧げている。そして買った物の維持のために、人生を捧げている。

つまり物にコントロールされた人生を生きているということ。

基本的に人間は自分本位だ。自分が生き残るためになら、他人を犠牲にすることを厭わない。自分の安全が確立されていないと他人に手を差し伸べる余裕すら起こらない。建前では『お互い協力していきましょう』と言っているが、所詮建前は建前だ。

そんな世の中に対してウンザリしていると、以前読んだウルグアイ40第大統領のホセ・ムヒカ氏のスピーチがふと思い浮かんできた。この消費社会に対しての本質に触れているので、本記事で全文紹介したい。

下記は2012年6月ブラジルのリオデジャネイロで開催された『リオ+20 国連 持続可能な開発会議』での演説内容だ。環境の未来を全世界で決めていくというお題目の会議で、ムヒカ大統領(当時)は最後の演説者として壇上に上がったのだ。

【ホセ・ムヒカ大統領スピーチ】

会場にお越しの政府や代表のみなさま、ありがとうございます。ここにご招待いただいたブラジル国、そしてディルマ・ルセフ大統領に感謝いたします。私の前にここに立って演説をした、心良きプレゼンテーターのみなさまにも感謝いたします。

国を代表する者同士、人類が必要とする国同士の決議を議決しなければならない。その素直な志をここで表現しているのだと思います。しかし、頭の中にある厳しい疑問を声に出させてください。

午後からずっと話されていたことは、『持続可能な発展と世界の貧困をなくすこと』でした。けれども、私たちの本音は何なのでしょうか。現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することなのでしょうか。

質問をさせてください。ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車と同じ数の車をインド人が持てば、この惑星どうなるのでしょうか。息をするための酸素がどれくらい残るのでしょうか。同じ質問を別の言い方でしましょう。

西洋の富裕社会が持つ、傲慢な消費を、世界の70億〜80億の人ができると思いますか。そんな原料がこの地球にあるのでしょうか。可能ですか。それとも別の議論をしなければならないのでしょうか。なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか。

マーケット経済の子供、資本主義の子供たち、つまり私たちが、間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作ってきたのです。マーケット経済がマーケット社会を作り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を求める社会にしたのではないでしょうか。

このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で、『みんな世界を良くしていこう』といった共存共栄な議論はできるのでしょうか。どこまでが仲間で、どこからがライバルなのですか。

このようなことを言うのは、このイベントの重要性を批判するためではありません。その逆です。我々の前に立つ巨大な危機問題は、環境危機ではありません。政治的な危機問題なのです。

現在に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです。私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるために地球にやってきたのです。

人生は短いし、すぐ目の前を通り過ぎてしまいます。命よりも高額なものは存在しません。ハイパー消費が世界を壊しているにもかかわらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。

消費が社会のモーターになっている世界では、私たちは消費をひたすら早く、多くしなくてはなりません。消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば、”不況のお化け”がみんなの前に現れるのです。

このハイパー消費を続けるためには、商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。と言うことは、本当なら10万時間もつ電球を作れるのに、1,000時間しかもたない電球しか売ってはいけない….。

私たちは、そんな社会にいるのです。

長くもつ電球はマーケットに良くないので作ってはいけない。人がもっと働くため、もっと売るために『使い捨ての社会』を続けなければならないのです。

悪循環の中にいることにお気づきですか。これは、紛れもなく政治問題です。私たち首脳は、この問題を別の解決の道に導かねばなりません。

石器時代に戻れと言っていません、マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。

昔の賢明な人々、エピクロス、セネカやマイデラ民族までこんなことを言っています。『貧乏な人とは、少ししかも物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ』

これは、この議論にとって文化的なキーポイントだと思います。私は国の代表者として、そういう気持ちでこの場に参加しています。私のスピーチのなかには耳が痛くなるような言葉が結構あるかと思います。

しかし、みなさんには水源危機と環境危機が問題の源出ないことを分かってほしいのです。根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは、私たちの生活スタイルだということ。

私は環境資源に恵まれている小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいません。でも、私の国には、世界でもっとも美味しい1300万頭の牛がいます。ヤギも800万から1000万頭ほどいます。私の国は食べ物の輸出国です。こんなに小さな国なのに領土の90%が資源にあふれているのです。

私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために闘いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間労働しています。

なぜか?

バイク、車どのローンを支払わなけらばならないからです。

毎月2倍働き、ローンを支払っていったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎ去ってしまいます。そして、自分自身に質問を投げかけます。これが人類の運命なのか…と。

私の言っていることはとてもシンプルなものですよ。発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛を育むこと、人間関係を築くこと、子供を育てること、友達を持つこと、そして必要最低限の物を持つこと。

発展は、これらをもたらすべきなのです。幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であることを覚えておかなくてはなりません。

ありがとうございました。

【日本語訳:打村明】

あなたはこのスピーチを読んで何を感じただろうか。この消費社会に生きる私たちが向き合わなければならない本質を含んだ内容だと思う。

自分なりの幸せや生き方について、今一度見直してみるのも良いかもしれない。

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